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夜の水族館で、夢をみる。


第一章 キオクのカケラ
水族館の中央には、大きな硝子の水槽がひとつ、ぽつんと置かれています。 けれど、泳いでいるのは魚ではありません。 ゆらゆらと漂っているのは、誰かが見た夢や、叶わなかった願い。 そんなものたちが、淡く光る欠片となって、水の中を彷徨っています。 水槽のそばに、一人の少女が座っていました。 顔には、名もなき花が咲いています。 彼女は両手で、ひとつの瓶に光のかけらを丁寧に収めていました。 それが、なんの光なのかはわかりません。 どこから来たのかも、なぜここにあるのかも。 けれどその光を見つめていると、胸の奥がかすかに温かくなったり、 またある時はちくりと痛くなったりするのでした。 その感覚は、懐かしさにも似ていて、 まるで、どこかで出会ったことがあるような、それは誰かであるような錯覚を覚えさせました。 集められた光たちは、"キオク"と名づけられました。 誰のものだったかもわからない。 けれど確かに、かつて誰かがここにいて、なにかを想っていた—— そんな証を、ひっそりと心の中に伝えてくれました。 少女はよく考えていました。 この光は、偶然現れたのか。...
ちも *ちも
11月12日読了時間: 3分
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