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夜の水族館で、夢をみる。
第二章 シロノキオク
夜の水族館に、新しい光が現れました。 それは、水底からゆっくりと浮かび上がってきた、小さなかけらでした。 他の光よりも、少しだけ温度を持っているように見えました。 少女はそれを両手ですくい、 硝子の瓶に入れようとします。 けれどその光は、瓶の中でゆらめいたあと、 まるで“マッテイル”かのように、消えずにそこにとどまりました。 その瞬間でした。 瓶の中の光が、ふわっと広がりました。 水族館の天井が溶けるようににじみ、 硝子の床がやわらかく波打ち、 ふたりの周りに、別の風景が広がっていきます。 それは、古い家でした。 木の匂いが立ちのぼるような、あたたかな部屋。 小さな窓。 光をやわらかく揺らす、レースのカーテン。 そして、縁側に座る、ひとりのおじいさん。 白い猫が、彼の膝の上で眠っています。 少女は、自分がそこに立っていることに気づきました。 けれど、おじいさんは少女を見ません。 少年の存在にも気づきません。 彼らはおじいさんのキオクの中にいるのでした。 触れられない。 声も届かない。 ただ、その場に立ち会うことだけが許されています。...
ともしょう
6月30日読了時間: 4分


第一章 キオクのカケラ
水族館の中央には、大きな硝子の水槽がひとつ、ぽつんと置かれています。 けれど、泳いでいるのは魚ではありません。 ゆらゆらと漂っているのは、誰かが見た夢や、叶わなかった願い。 そんなものたちが、淡く光る欠片となって、水の中を彷徨っています。 水槽のそばに、一人の少女が座っていました。 顔には、名もなき花が咲いています。 彼女は両手で、ひとつの瓶に光のかけらを丁寧に収めていました。 それが、なんの光なのかはわかりません。 どこから来たのかも、なぜここにあるのかも。 けれどその光を見つめていると、胸の奥がかすかに温かくなったり、 またある時はちくりと痛くなったりするのでした。 その感覚は、懐かしさにも似ていて、 まるで、どこかで出会ったことがあるような、それは誰かであるような錯覚を覚えさせました。 集められた光たちは、"キオク"と名づけられました。 誰のものだったかもわからない。 けれど確かに、かつて誰かがここにいて、なにかを想っていた—— そんな証を、ひっそりと心の中に伝えてくれました。 少女はよく考えていました。 この光は、偶然現れたのか。...
ちも *ちも
2025年11月12日読了時間: 3分
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